トーラムオンライン サイドストーリー
と抵抗するのも虚しく、問答無用でエル・スカーロの夜の街路へ連れ出されて行った…
「なななな、何でこんなに暗いのよ~!もっと魔法燈とかあったっていいじゃない。エル・スカーロってのは文明的な街じゃないの~?」

 夜の街路の真ん中で、ペルルは悲鳴を上げた。真夜中近くとはいえ、街路にはポツンポツンとしか街灯がなく、それも薄ぼんやりした光を放つ、古い魔法燈のみだ。昼間とは違う不気味な風景にガタガタと足の震えが止まらない。
「どどどど、どうすりゃいいのよ⁉足の震え止まんないわよ~!あたい、武器ももってないのよ?木彫りの人形が出て来たって戦えるわけないじゃん‼」

 半泣きのペルルを見て、バルフトは笑いながら、
「何言ってるんだ。背中にしょってるのは飾りか?それを使えばいいだろう。」
と指差す。ペルルがあわてて背中を探るとハンマーの柄が手に触れた。前に出してみるとフィレーシア邸で厄介な大量の結晶に囲まれた時、フィレーシアからもらったハンマーだ。
「あ、すっかり忘れてた…これね」
「それで思いっきりぶっ叩けば、木彫りの人形などひとたまりもないさ…さて、そろそろお出ましの時間だな。気をつけろ!」
バルフトの声が少し張りつめる。ペルルもハンマーを構えて辺りを見回す。
と、その肩を後ろからつつかれるのを感じて、ペルルは苦笑いして言った。
「も…もー!止めてよ、トリエルさん‼こんな時にいたずらなんて趣味悪いわよ?」
「私がどうかしましたか?」
ペルルの前で警戒していたトリエルが振り向く。バルフトも右手の少し離れた所にいる。
「え、ええっ⁉…て事は…」
ペルルがゆっくり振り向くと、目の前で不気味な木彫りの人形がこれまた不気味な踊りを踊っている。人形の手足には長い紐が付いており、その先に分銅のような飾りが結わえつけられている。人形が踊って手足を動かすたびに、その飾りがペルルの肩口をつついていたのだ。
しばらくの間、踊る人形を見つめていたペルルだが、踊る人形の顔が目の前に来た途端、
「ひ、ひ、ひぎゃーっ!」
金切声をあげながら、力任せにハンマーをスイングする。乾燥した板を重ねて割ったような音と共に、木彫りの人形は見事に砕け散った。それを合図にしたように周囲からわらわらと木彫りの人形が躍りながら現れる。
「よし!任せろ‼」
バルフトは斧を使って人形たちに致命傷を与えず、器用にペルルの方へ追いこんでゆく。やがて、ペルルの前には人形の長い列ができ上がった。それを片っ端からハンマーで砕きつつ、
「ちょっとおっ!何でっ、あたいの方ばっかにっ、人形をっ、並ばせてんのよっ‼これじゃっ、キリないでしょっ!」
ペルルがバルフトに叫ぶが、バルフトは笑って手を振り、
「がんばれよー。人形はまだまだいるからなー。」
と言いながらトリエルと合流する。トリエルも木彫りの人形相手に奮戦するペルルを見つめ、
「これが少しでも、彼女の気晴らしになってくれればいいのですが…」
とつぶやく。バルフトもうなづきながら、
「大丈夫だろう。かなりいい顔つきになってきたし、目の輝きも大分戻ったようだしな…」
つぶやいた後、視線を空に移し、
「それにしても、冒険者はどうなったのか…光に包まれて消えたと言う事は、エルバーノ王がおっしゃる通り、死んだのではないように思えるし、そう思いたいが…」
「私も…何にしても、その答えはそう遠くない時期に分かるような気がします…」
トリエルも空を見つめ、バルフトと共に、過去幾度も交流のあった不思議な雰囲気を持つ冒険者に思いをはせていた。その時、
「ちょとおっ、あんたたち!なに二人でまったりしてるのよぉっ‼あたいだけに戦わせないで、ちったぁ手伝いなさいよおっ!!」
汗まみれのペルルが、叫びながらハンマーを振り回している。空振りが多いものの、それでも足元には、ハンマーで砕かれた相当な数の木彫りの人形が転がっている。それを見たトリエルとバルフトは、互いに顔を見合わせて微笑みながら、
「おお!すまん、すまん。すっかり忘れてた。」
「申し訳ありません。今行きます!」
各々の得物を手に、ペルルの援護に向かった…
「こ、これ…って、どゆこと?」

 数時間後、不気味に踊る木彫りの人形を全て撃破したペルル、トリエル、バルフトは意外な場所に立っていた。人形と戦いながら、その発生場所を探してたどり着いたのは、フィレーシアの屋敷前だったのである。踊る木彫りの人形も、フィレーシア邸で起きた不可思議現象の一つと言う事なのか?
「とりあえず、家人に事情を聞いてみましょう…」
「ちょとっ!今、何時だと思ってんのよ!」
止めるペルルを気にも留めずに、トリエルが呼び鈴を鳴らす。五分ほど静寂が続いた後、扉が開いて、寝ぼけまなこのフィレーシアが現れた。
「どうなさいましたの?こんな夜中に…ふぁああ…」
「夜分に申し訳ないが、街人を怖がらせていた不気味な木彫りの人形を追っていたら、この屋敷から出現していたのだ。何か心当たりはないか?」
半分寝ているフィレーシアの両肩を持って、激しく揺さぶらんばかりに詰め寄るバルフトをトリエルが制する。と、フィレーシアが寝言を言うように、
「ふぇっ、木彫りの人形?不気味な踊りを舞う人形の事れすか?…それでしたら、先日の結晶がらみの事件より以前に、深夜、屋敷の中に出現しまひて…目撃ひた使用人たちが怖くて眠れないと訴えておりまひたが…いつの間にか結晶が引き起こす怪異現象に変わっておりまして、その騒ぎに紛れてすっかり忘れておりまひた…くー…」

 それを聞いたペルルは、思わず脱力して、
「あのさぁ…そーゆーことはもうちょい気にしようね…結局、今まで起きた不可思議現象は全部、あんたのお屋敷から起こってて、しかも、それは、何者かにしかけられたもんじゃないの!」
立ったまま上半身を前のめりにして寝ているフィレーシアに話しかける。それを聞いて、トリエルが驚いたように振り返り、驚きの声を上げる。
「えっ、全部⁉今までここで起こったという不可思議現象が全部仕掛けられたものなのですか⁉いったい誰がそのような…」

 ペルルは近くにあった小石を拾い、一方へ歩み寄りながら、
「あたいも誰だかはわからないんだけど、近くにいるんじゃない?例えば…そこっ‼」
鋭い叫び声と共に暗がりへ投げつける。同時に小石の飛んで行った方向で
「きゃぁっ‼」
小さな叫びが上がり、逃げ出す足音がする。すかさずトリエルが滑らかな身のこなしで、逃げる人影を取り押さえた。
「おとなしくなさい!捕えました。賊は女性ですわ!」
捕えられた賊はトリエルに腕の関節を決められ、苦悶のうめき声を上げる。
「あれぇっ!はっ、放しなさい!お放しになってぇ~‼」
声と言葉の特徴を聞いて、トリエルの捉えた手が緩む。
「あら⁉あなたは…たしかソフィアの街で…」
トリエルの言葉を聞いて人影の顔を覗き込んだペルルも、
「あ~っ、うちの冒険者にいっつもいろんな物集めを頼んでたお屋敷のお嬢じゃん!確か…」
と言ったところで、背後から
「むにゃ…レフィーナ?レフィーナではないれすか…なんれ、あなたがこんな所に…」
寝巻で目をこすりながらフィレーシアがふらふらと近寄って来る。レフィーナ、それを見て、
「げっ!イブリン…」
と、つぶやくのを聞いて、ペルルは砕いた結晶を捨てに行った時の事を思い出した。
「あんた、あたいとバルセットが結晶を捨てに行く時に、通りにいたわよね?」
レフィーナに尋ねるが、一瞬ギクリとしたものの、横を向いて返事をしない。
「あの時もあんた言ってたわね、イブリンって…」
「イ、イブリン??とは誰の事だ?」
遅れて近づいてきたバルフトが尋ねる。と、それまで黙っていたレフィーナが、
「そこで寝ぼけくさっているかっぺ娘の幼名ですわ!かっぺのクセにフィレーシアなんぞとこぎれいな名前を名乗って…幼名のイブリンでももったいないくらいです!」
その語気の強さに、ペルルは少し後ずさった。
「ええ、この一連の騒動をしかけたのはわたくしです!でも最初にしかけてきたのはイブリンの方なのです。事あるごとに、わたくしやわたくしの家を田舎者呼ばわりしくさったあげく、先日、とうとうわたくしの寛大な心の限界を超えるような事をしでかしてくれたのです!ですから!その仕返しをするべく、今まで集めに集めた邪悪なしかけを一気にこのかっぺ娘の屋敷にしかけてやったのですわ‼」
一気にまくしたてて、荒い息をつくレフィーナを、少し遠巻きにみつめながら、ペルル、トリエル、バルフトはどうしたものか悩んでいる。と、またもや寝ぼけているフィレーシアが、
「レフィーナ…わらくしはあなたの事大好きれしてよ…」
つぶやいた言葉にペルルたちは驚いたが、それ以上に驚いたのはレフィーナだったらしい。
「な、何、バカな事を…今までわたくしの神経を逆なでするようなことを散々やっておいて…」
とわなわな震えるレフィーナに、まだ寝ぼけた状態のフィレーシアはふにゃりと笑いながら、

「え~、レフィーナ…あなたはわらくしが出したちょっかいに真剣に応えてくれるではないれすか…他の人はうわべだけで適当にあしらって終わりなのに…レフィーナだけがいつも本気で向かって来てくれる…わらくし、これほど嬉しいことはありませんことよ~…」
言い終えると、また立ったまま寝てしまった。ペルルたちは横であっけにとられている。レフィーナは俯いて体を震わせていたが、キッとフィレーシアをにらみつけ、
「今日の事はあなたの寝ぼけた上での戯言として聞いておきます!こ、こんな事聞いたら、こ、こ、これから仕返ししにくいではないですの!も、何が何だかわかりませんわ‼わたくし、帰らせて頂きます!覚えてらっしゃい、このかっぺ娘‼」
アタアタとぎこちない動きで町を出て行った。あとに残ったペルルたち三人は、しばらく呆気にとられて見ていたが、やがてバルフトが、
「いいのかね、捕まえなくて?不可思議現象の犯人だろう?」
と頭をかくのを見て、トリエルは苦笑しながら、
「いいのではないですか。フィレーシアさんの本音をレフィーナさんも聞けたことですし…」
それを聞いてペルルが、
「本音なのかな~?寝言のような気がするけど…ま、いっか。レフィーナさんもあれ聞いたら、少しフィレーシアさんの見方も変わるだろうし…よかったんじゃない?とりあえず、今回の連続不可思議現象はこれで解決って事で!」
ペルルがニカッと笑うのにつられて、トリエル、バルフトも微笑む。
「ところで…この方、どうしましょう?」
トリエルが手で指した先には立ったまま上半身前のめりの状態で寝ているフィレーシアが。
「わわっ⁉フィレーシアさん!この状態で寝られるって…すごいわね。」
呆気にとられているペルルの帽子を軽く押さえながら、
「感心してる場合か!とりあえず家人が起きる前に、寝床へ運ぶぞ!」
朝日が昇り始める中で、ペルル、トリエル、バルフトの三人は連続不可思議事件最後の仕事に取り掛かった…
 次の日の朝、ペルルは王宮内の客間にある立派なベッドの上で目を覚まし、飛び上がるように起き上がった。
「あれ?あたい…」
辺りを見回しながらどうしてここに寝ているのか考える…昨日、王宮に戻り、フィレーシア邸の連続不可思議現象を鎮圧できたことをエルバーノ王に報告して…トリエル、バルフトと共に王が催してくれた宴で騒いでいるうちに、疲れて寝てしまったらしい。その後、誰かがここまで運んでくれたのだろう…
「うわぁ…夕べの事、何も覚えてないわ…恥ずかしいことしてなきゃいいけど…」
ペルルが頭を抱えたその時、衛兵があわただしく部屋に入ってきた。
「おお、ペルル殿!お目覚めだったとはちょうどいい。至急、王の間までお越しを!」
「へ?ふぁい!すぐ行きます‼」
ベッドから飛び降り、着替えもそこそこにペルルが王の間へ行くと、エルバーノ王が兵士たちに指示を出しているところだった。ただならぬ雰囲気を感じながら王に尋ねてみる。
「王様、どうしたの?」
「おお、ペルル!すまぬが、至急流浪の平原に向かってくれ!怪物が出現したそうなのだ。数は一匹だけだが、討伐に向かった兵士たちをも圧倒する強さらしい。至急討伐を頼む!」
王の依頼に、ペルルは思わずあわてて、
「討伐?あたいがぁっ⁉いやいやいや、そういう事はトリエルさん、バルフトさんに頼むべきじゃない?」
エルバーノ王は首を振り、
「いれば頼んでおったが、あの二人は昨夜の宴の後、修行に戻ると旅立ってしまったのだ…」
「げ⁉そんなぁ…」
「だが、旅立つ際にバルフトが言っていたぞ…ペルルは我々兄妹に比肩するくらい強くなった、と。彼の者たちが世辞を言うとは思えんが?」

 その言葉を聞き、バルセットやトリエル、バルフトが自分の前に現れたのは、強くなれるようきっかけを与えに来てくれたのかも知れない、という思いがペルルの心をよぎる。だとすれば、今自分がやる事は…
「…行く。流浪の平原だったわね?どんな怪物だろうが、今回だけはあたいがぶっ倒す‼」
決意を秘めたペルルの顔を見て、エルバーノ王の顔がほころぶ。
「うむ!よく言った‼よろしく頼むぞ!」
その言葉を背に、ペルルは流浪の平原へと駆け出した…
数刻後、遠巻きに見守るエル・スカーロの兵士たちに囲まれる形で、ペルルは手に馴染んできた大きなハンマーを手に、怪物と対峙していた。
「ペルル殿ぉっ、どう援護すればよろしいか⁉」
後ろからの兵士の声に、
「援護攻撃されると、あたいがよけらんないから今はいいわ。あたいが倒れたら総攻撃して!」
と言って怪物を見る。コリンという小型の怪物だが、全身に細かい青黒い結晶や赤黒い結晶がびっしりと鱗状に張り付いている。極悪そうに変形した外見はコリンモンスターと言うべきか。
「あの結晶って…あたいたちが砕いてここいらに捨てたやつ?何、また動き出したって事ぉ⁉」
ペルルの驚きの叫びを聞きつけたように、コリンモンスターは小さい結晶を身体の周りに浮遊させたかと思うと、一本の鋭いやり状に変化させ、ペルルに投げつけてきた、
「上等じゃん‼でりゃぁああっ!」
それをペルルはハンマーで弾き、回転して空を舞っているのを上からの一撃で地面に叩き伏せ、粉々に砕き、全速力で走り出す。
「今度はこっちの番だわよーっ!」
接近して、ハンマーでコリンモンスターの身体に付いた結晶を叩き落とすそうとするが、モンスターは結晶の渦を作り出して、ペルルを宙に巻き上げる。
「ふぎゃぁぁああっ!あたっ、あたっ、あたたたたっ‼」
渦の中を飛び回る結晶が、散弾のようにペルルを襲う。宙高く巻き上げられた状態で、結晶に傷つけられながらもがくペルルを見て、
「ペルル殿⁉おのれぇぇええっ‼」
見かねた兵士の一人がコリンモンスターの頭部へ石を投げつける。石はモンスターの後頭部に当たり、かなりの衝撃を与えた。突然、渦が消える。
「へ?にゃあぁあぁあぁあっ‼」
自分を宙に持ち上げていた渦がなくなり、ペルルはそのまま地面へと落下する…と思いきや、空中で泳ぐようなポーズをとって姿勢を整え、くるくる旋回しながらコリンモンスターの真上へ到達した途端、ハンマーを振り上げた姿勢でまっすぐ落下してきた!
「どりゃぁぁぁああああっ‼」
着地するよりも先にハンマーをコリンモンスター目がけて振り下ろす。次の瞬間、すさまじい音と共に結晶が四方へ飛び散った。周りにいた兵士たちは思わず手で顔をかばう。

 やがて結晶の欠片の飛散が収まり、モンスターのいた方を見た兵士たちの視界に飛び込んできたものは、目を回して倒れているコリンと、壊れてしまったハンマーの残骸が付いた柄を手に、荒い息をしながら立ち尽くしているペルルの姿だった。やがてコリンが目を覚まし、辺りを見回してピョコピョコと逃げてゆくのを見て兵士たちの歓声が上がる中、ペルルは、
「あ~あ、もらったハンマー、壊れちゃったかぁ…」
とつぶやきを漏らし、安堵と疲れでその場にしりもちをついた…
兵士の肩に乗せてもらい王宮に戻ったペルルは、エルバーノ王の前にいた。コリンモンスターとの戦いを見守っていた兵士たちが彼女の後ろで見つめている。

 王は満足そうにペルルを見つめ、
「この度の、そなたの一連の活躍は目を見張るものがあった。冒険者と離れても、そなたは高く評価されるべきひとかどの人物と言えよう…どうだ?これからは不可思議問題の参謀としてこのエル・スカーロに留まって欲しいと思うのだが…」
ペルルを称え、名誉ある任務を依頼する王の言葉に、兵士たちから歓声が上がる。しかしペルルは首を左右に振り、
「王様の気持ちはありがたいんだけど、やっぱ、あたい商人で、参謀とかそういうの性に合わないから…」
エルバーノ王は一瞬、当惑の表情を浮かべながらも、すぐ威厳ある態度で、
「では、これからどうするつもりだ?」
「リャノ婆…あたいの婆ちゃんが待ってるキャラバンに帰る。で、一から商売の勉強をやり直そうかなって…」
にっこり笑うペルルに、
「そなたが決めた事であるゆえ、私が口を差し挟む余地はなさそうだな…そなたの今までの冒険の経験も惜しむべき知識なのだが…致し方あるまい…」 王の言葉には残念さがにじんでいる。兵士たちも下を向き、無言が場の空気を湿らせる…

 そんな湿度を晴らすかのように、ペルルが口火を切った。
「王様、あと一つ、あたいのわがままを聞いてくれない?」
エルバーノ王は改めてペルルを見る。
「わがまま?構わん、言ってみるがよかろう。」
「キャラバンに帰る前に、もう一度カレ・モルトに行ってみたいんだ。冒険者にはいろいろひどい目にあわされたり、大損させられたりしたけど、こうやって王様に認められるほど、すごい経験をあたいにくれた…だから、最後にお別れじゃなくて、お礼を言いたいと思って…どうかな?」
おずおずと話すペルルに、優しく微笑みかけ、
「構わんぞ、行って来るがいい。ただ、カレモルトはまだ安全とは言い難い。誰か二名、ペルルの護衛についてくれ。」
兵士たちに呼びかける。間を置かず、二人の兵士が前に出て、
「我々がペルル殿の護衛に付かせて頂きます!」
ペルルの両側に立った。ペルルもうれしそうに兵士たちを見上げながら、
「よろしく…それじゃ、今から行って来るね!」
エルバーノ王に手を振り、王宮を出てゆく。その後ろ姿は、数日前の冒険者を失って途方にくれた姿ではなく、冒険者がいなくても自分で行動できる強さを手に入れた、自信に満ちた姿だ。エルバーノ王は陽光の中へ消えてゆくその後ろ姿を頼もしく見つめていた…

      
後書き
ペルルへ、ロゴでの名前のスペル間違いゆるしてね。
ペルル・オフライン
2017年7月16日 発行
文  NARIHIRO
装 画  i90
挿 絵  加藤旅人
装 丁  i90
発行者 鈴木P
発行所 アソビモ株式会社